一日中ベッドの中で横になっていたのに
まるで鉛を背負ったように身体が重くて起き上がれない。
「せっかくの休日なのに、何ひとつできなかった……」
「どうして自分は、こんなに怠け者でダメなんだろう」
夕暮れの薄暗い部屋の中で
動けない自分を責め、深い自己嫌悪と焦りに胸を締め付けられたことはありませんか。
私自身、会社員時代や人生のどん底にいた頃
この「泥のような得体の知れない疲労感」に何度も何度も苦しめられてきました。
けれど、どうか自分を責めないでください。
あなたが動けないのは、意志が弱いからでも、怠けているからでも決してありません。
あなたの身体ではなく
「心が千切れそうなほど、ずっと考え続けてきたあなたの脳」が
限界を迎えて悲鳴を上げている証拠なのです。
脳という名の「小さな大食漢」の正体
肉体の疲れは、とてもわかりやすいです。
筋肉痛や息切れとして自覚でき、一晩ぐっすり眠れば、大抵の疲れは回復していきます。
しかし、「脳の疲労」はまったく別物です。
目に見えないため軽く見られがちですが、身体の負荷に換算すると、想像を絶するエネルギーを消費しています。
脳疲労の負荷は、肉体的な運動量に例えると、
「踏み台昇降を約100回連続で行った状態」に近いと言われることがあります。
これは決して大げさな比喩ではありません。
脳は、人間の臓器の中で圧倒的にエネルギーを食い尽くす「大食漢」だからです。
医学的な事実として
脳の重さは「体重のわずか約2%」しかありません。
それにもかかわらず、「全身が消費する全エネルギーの約20%」を、この小さな頭の中だけで消費しています。
つまり、あなたが休日、ソファやベッドの上でじっと動かずにいたとしても、頭の中で、
「月曜日のあの仕事、どうしよう……」
「あの時、あんなこと言わなきゃよかったな……」
「あの人は私のことをどう思っているんだろう……」
と、他人の顔色や過去の後悔、未来の不安をグルグルと考え続けているだけで
あなたの身体は「激しい運動をノンストップで続けている」のとまったく同じ負荷を受け続けているのです。
身体が重くて動かないのは、当たり前なのです。
あなたの脳は、休む間もなくフルマラソンを走り続けていたのですから。
「何も考えない」ができない心理的な理由
「それなら、頭を空っぽにしてリラックスしよう」
そう思って目を閉じても、不思議なことに、余計に嫌なことや不安が次から次へと浮かんできてしまいませんか?
実はこれ、心理学で【皮肉過程理論(Ironic Process Theory)】と呼ばれる、人間の脳の仕組みによるものです。
有名な実験があります。
「今から1分間、絶対に『白いクマ』のことだけは考えないでください」と言われると、
人間はかえって白いクマのことで頭がいっぱいになってしまいます。
「考えないようにしよう」と意識すればするほど、
脳の無意識のセンサーが「余計なことを考えていないか?」と監視を始めてしまい
結果として、その不安や悩みを脳のど真ん中に引っ張り出してしまうのです。
真面目で、優しくて、誰かの期待に応えようと気負ってしまう人ほど
「早く元気にならなきゃ」「しっかりしなきゃ」と頭に力を入れ
無意識のうちに脳を24時間フル稼働させて、知らず知らずのうちにエネルギーを干からびさせてしまっています。
かつて恩師が教えてくれた「白と黒、半分ずつの調和」
では、どうすればこの休まらない脳の暴走を止めることができるのでしょうか。
私の人生の恩師は、生前、よく「太極図(あの白と黒が合わさった勾玉の図)」を描いて、私にこう語ってくれました。

「人はね、、頭(思考)だけで生きようとすると必ずゆがみがおきます。
白い部分にも黒い点があり、黒い部分にも白い光があるでしょ?
完璧に白くなろうとしなくていい。100%考え抜かなくていいんです。
頭で考えるのは半分。あとの半分は、身体の感覚、そして潜在意識に任せるんです」
現代を生きる私たちは、仕事でも人間関係でも、
「顕在意識(頭で考えること)」ばかりを100%フル回転させて生きています。
けれど、頭だけで全てをコントロールしようとすると、心と身体に必ず無理な「ゆがみ」が生まれてしまうのです。
自然の法則は、いつだって「半分と半分(50対50)」です。
落ち込むことや、不安になること(黒)があってもいい。
その真っ暗に見える夜の中にも、必ず小さな光(白)は息づいています。
完璧な人間になろうとして、自分の中の黒い点を無理やり消そうとする必要なんてありません。
考えすぎて疲れたなら、それは「頭の役割を十分に果たしたサイン」です。
あとは頭のスイッチをそっと切って
温かい湯気を感じたり、足の裏の温もりを味わったりして、身体の感覚に戻る。
そして、大いなる潜在意識(あなたの魂、無意識の力)に、そっと委ねてみる。
「頭で考えること(顕在意識)」と、「身体と魂が感じること(潜在意識)」。
そのふたつが50対50で美しく巡り始めたとき、私たちの心と身体は、本来の澄んだ静けさへと自然に戻っていくのです。
誰かの機嫌を取る暇があったら、まず自分を喜ばせてあげる
世間はいつも、「もっと成果を出せ」「もっと立派になれ」と私たちを急き立てます。
けれど、他人の期待に応えるために、誰かの作った型に無理に自分を押し込める必要なんてありません。
何度も心が千切れそうになりながら、
投げ出さずに今日まで歩いてきたはずです。
今日も、生きているんですから。
誰かの機嫌を取る暇があったら、まず自分を喜ばせてあげる。
あなたの貴重な心と命は、あなた自身を幸せにするために使ってもよいのです。
もう、反省会もおしまい。難しいことを考えるのもおしまいです。
不器用な歩みのままでいい。
ただ温かいお風呂に入り、柔らかい布団に包まれて、
今日まで懸命に命をつないできた自分自身を、認めて眠りにつく。
あなたが心と身体を壊さず
「ゆる~く、らく~に」、自分の人生をあいせるように。